ホルムズ海峡に護衛艦を派遣できるのか。

 国際協調とは何か。日本が国際的に認められたのは第一次大戦当時の地中海への艦隊派遣。戦後の日本は出遅れのみ。現行法制でホルムズ海峡を通過する日本船団を護衛可能か・・時代は日本に変化を求めている。その変化とは・・
山下裕貴 2026.03.08
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 本年二月でウクライナ戦争は5年目に入った。現在、全体としてはロシア軍が優勢な戦況にみえる。実態はロシア軍の浸透攻撃による小規模地域の占領と兵士の損耗、ウクライナ軍は領土を削りロシア軍に出血を強要する。つまりロシア軍は犠牲を許容しながら前進するという状態である。

 兵士の損耗はウクライナ側1にロシア側3の割合の消耗戦である。米戦略国際問題研究所(CSIS)のレポートによれば、戦争開始以降、ロシア軍の死傷者120万人、ウクライナ軍の死傷者60万人に達している。 

 

 米国を中心とする西側諸国は侵攻開始後、直ちにロシアに対して厳しい制裁を科した。日本も欧米と歩調を合わせ制裁に加わっている。国際社会において責任ある国家であるとの立場を示したことは大いに評価できる。責任ある国家とは一国の利害だけではなく、国際的な観点から政策を積極的に実行していくこと、いわゆる国際協調を積極的に実践していくことである。

 

  我が国の歴史の中で国際協調の成功例を見てみたい。第一次大戦が勃発して間もない1914年八月に英国政府から日本政府に陸軍3個軍団及び海軍艦艇の派遣要請があった。しかし日本政府は陸海軍とも派遣を断った。理由は次のようなものである。陸軍は派遣軍が任務を達成するためには10個軍団以上の兵力が必要であり、これは日本陸軍全力となり国防上の空白が生じる。海軍も主力艦は新式艦艇への更新中であり、かつ遠く外征する能力はない。

 1917年一月に再び英国政府より商船保護のために水雷戦隊1隊を地中海に派遣してもらいたいと懇請された。日本政府は派遣に同意し、駆逐艦8隻を地中海に派遣することにした。終戦までに348回の船団護衛を行い多くの船舶・兵員の護送任務を行った。その成果は英国から高い評価を受け、日本の国際社会での地位向上に貢献した。この功績により連合国の一員としてパリ講和会議への参加が可能になり、国際連盟の常任理事国にもなることができた。

 

 本年二月二十八日、米国はイスラエルとともにイラン国内の核施設や軍事拠点、政府施設などに対する空爆を開始した。この空爆により、イスラム最高指導者・軍幹部・革命防衛隊司令官など多数が殺害された。

 現在もテヘラン中心部を含む全土の都市や施設で空爆が行われている。イランは報復として、湾岸諸国にある米軍基地や同国の石油関連施設にドローンやミサイル攻撃を行うとともに、ペルシャ湾内の石油タンカーを攻撃し、それぞれに被害が発生している。

 この攻撃に加えてイラン革命防衛隊は、ホルムズ海峡を通峡する船舶を攻撃すると宣言し、事実上同湾は封鎖された。

 米国はホルムズ海峡を通過する船舶を護衛すると発表したが、イランにミサイルやドローン及び機雷敷設能力が残存しているかぎり、その実行は困難だろう。

                                                              ( ホルムズ海峡 CNN   )

( ホルムズ海峡 CNN )

  思い出されるのは湾岸戦争後の1991年4月からの掃海隊のペルシャ湾派遣である。日本政府は多国籍軍に自衛隊を派遣せずに資金協力(130億ドル)のみにとどめた。この行動に「カネは出すが人は出さない」として国際社会、特に欧米から強く批判された(これを契機に自衛隊の国際貢献活動が活発化していく)。

 

 このままホルムズ海峡が封鎖されたままになると世界経済に大きな影響がおよぶことになる。戦争が長期化すれば、トランプ大統領が高市首相にペルシャ湾に海上自衛隊の護衛艦を出せと要求する可能性がある。また機雷が敷設されれば機雷掃海に掃海艇の派遣を求めるかもしれない。

 現在の法の解釈では存立危機事態にも重要影響事態にも当てはまらない。ペルシャ湾への自衛隊派遣は、集団的自衛権の行使であり、新たな立法措置をしない限り不可能である(超法規措置という政治判断があるかもしれないが・・)。

 しかしながら、主要国がペルシャ湾に派遣する事態となったとき、日本が要求を断れば「日本は中東の石油に依存しておきながら国際的な活動に協力しないのか」との非難を受けるだろう。

 

 世界は新たな帝国主義・重商主義の時代に入ったと考えるべきだろう。そして戦争の時代でもある。

 日本周辺では、中国の不透明な軍事力の増強及び台湾周辺での大規模演習、周辺海域での力による現状変更の動きなど厳しい現実がある。

 時代が日本の変化を求めているのではないのだろうか。変化とは現実を直視し、世界は日本国憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」のような夢の世界ではないと認識することである。高市政権は憲法改正に前向きであり、冷静に国民的議論をすべき時である。

 

 これからも日本に厳しい決断を求められる時がくるだろう。その時、日本は責任ある国家としてその姿勢を示すことができるのだろうか。

 

 

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