海洋型ドローン対有人艦隊
激戦が続くウクライナ戦争も本年二月で四年目に入った。世界各国はこの戦争のデータを収集し詳細に分析しているだろう。

( ウクライナ軍海洋型ドローン、BBC資料 )
中国にとってもこの戦争は近代戦を目の当たりにできる絶好の機会であり、作戦及び軍事科学技術上の教訓の宝庫と見ているはずだ。その研究成果を来るべき台湾侵攻作戦に反映し、近代戦に勝利しようと情報収集に努めているだろう。彼らはどのように分析しているのだろうか。緒戦の段階であるハイブリッド戦及び航空優勢獲得の点からみてみたい。
ロシアのハイブリッド戦の効果は、ウクライナ側の準備と西側諸国の協力・支援により大きく減じられた。ハイブリッド戦とは軍事と非軍事の境目を意図的に曖昧にした手法である。国籍不明部隊を用いた作戦、重要インフラに対するサイバー攻撃、インターネットやメディアを通じた偽情報の流布などにより相手方に複雑な対応を強いる。中国軍はロシア軍の緒戦における失敗を繰り返さないはずだ。特にサイバー攻撃による重要インフラの機能障害、インターネットやメディアを通じた偽情報の流布などの工作に重点を置くものと思われる。10万を超すといわれるサイバー戦部隊を中核とし侵攻前から激しい攻撃を加えてくるだろう。また台湾の利用している通信用衛星の破壊のみならず、利用可能な他国通信衛星の破壊や妨害も行うことも考えられる。
中国軍は特殊部隊を潜入させて台湾本島における反政府活動を指導・支援させ、親中派を中心とする反政府団体を利用してサボタージュやテロを起こさせると思われる。また軍人や公務員など要職にある人間の買収工作を行い、組織の弱体化を行うだろう。
中国空軍は台湾空軍に比較して圧倒的な航空戦力を有しており、緒戦において台湾海峡の航空優勢を確保するものと思われる。次に地上部隊掩護のため台湾本島における航空優勢の確保を図る。この際、台湾の残存防空能力をいかに少なくするかが課題となる。侵攻前に精密誘導兵器により、対空レーダーやミサイルの破壊を行うが、そのすべてを無力化することは困難である。台湾軍の移動式レーダーや対空ミサイルの配置に関する情報を偵察衛星はもとより、情報工作員、協力者などすべての組織を挙げて全力で収集する。地上作戦間に発見した移動式対空ミサイルなどは、主として自爆ドローン等により攻撃し、防空網の破壊を目指すと予想される。
米・台が学ぶべき勝利の糸口もある。それは艦船群が台湾海峡を渡海する時を狙う海洋型ドローンの攻撃である。
ウクライナ軍が黒海において、史上はじめて海洋型ドローン(自爆)を使用し、クリミア大橋の破壊、ロシア海軍黒海艦隊艦艇への襲撃などの戦果を上げた。この海洋型ドローンは将来、どの様な兵器に進化していくのだろうか。台湾海峡を渡海して、兵員や膨大な量の弾薬・燃料等を海上輸送する中国軍にドローン攻撃を加えるとういシミュレーションから考えてみたい。
米インド太平洋軍司令部では、作戦部長が司令官に台湾海峡での作戦について報告を行っていた。その作戦は、中国軍の海上輸送船団を海洋型ドローンで攻撃するものであり、次のような作戦であった。
AI搭載半潜水ドローン150隻をバシー海峡北側、台湾南西部の恒春鎮沖から発進させる。半潜水ドローン群は台湾暖流に乗り、澎湖列島西側から台湾海峡を進み、台湾海峡を航行する中国海軍の護衛する輸送船団を急襲する。これらの半潜水ドローンは偵察衛星から目標情報を受信して大型貨物船を選定し攻撃する。また、水上ドローン100隻を囮として澎湖諸島東側の澎湖水道方向から前進させるという欺編作戦を同時に実施する。
開始された台湾海峡海戦は、中国艦隊対米軍海洋型ドローン艦隊、つまり現代戦争史上初の有人艦隊対ドローン艦隊の海戦になった。中国海軍フリゲート艦は、澎湖水道から出現した水上ドローンを速射砲や機関砲射撃で迎え撃った。その機に乗じて、半潜水ドローンが台湾海峡に忍び込み、大型貨物船を目標に自爆攻撃をかけた。攻撃を受けた貨物船は大きな爆発と水柱を上げ、火炎に包まれながら次々に海没していった。
台湾海峡は、爆発する船舶の閃光と爆炎に包まれ、また被弾したタンカーから海上に流れ出た燃料に引火し火炎が幾筋も帯のように連なり地獄の様相を呈していた。
この海戦はあくまでシミュレーションである。しかし実際に米国防高等研究計画局は、海洋型ドローンの研究開発を進めている。それはモジュール交換により偵察や攻撃任務に多用できる水上ドローン、海上システムとして通信アンテナなどの一部を海面に露出し、母艦とリアルタイムで通信可能な半潜水ドローン、自律航行によって長距離・長時間で運用し潜水艦を探知できる水中ドローン、などである。英国やトルコ、イスラエルなども海洋型ドローンの戦力化を急いでいる。
圧倒的な戦力を有する中国海軍に立ち向かえるのは、AI搭載のドローン艦隊なのかもしれない。
日本政府はウクライナ戦争の停戦交渉や戦況だけに目を向けず、この戦争を軍事的に詳細に分析し、安保三文書改訂に合わせて自衛隊の戦力構成を抜本的に見直し最新化しなければならない。
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