総選挙、大勝。最大の懸案は中国だ!
総選挙結果は自民党が三分の二を超える歴史的な大勝だった。参院での少数与党は変わらないが、同院で法案が否決されても衆院で再可決可能となり、安定的な政権運営が可能となった。
日本の安全保障上の最大の懸念は中国だ。高市政権に圧力を加え続けている中国首脳部は、今回の選挙結果を苦々しく感じていることだろう。高市首相は3月に訪米しトランプ大統領と会談を行う予定である。首脳会談では台湾海峡の平和と安定について議論されるだろう。
中国の強大な軍事力を持ってすれば、すぐにでも台湾海峡を越えて渡台湾に侵攻できるのだろうか。ロシア軍が陸続きのウクライナに侵攻したのとは明らかに条件が違う。台湾海峡は狭い場所で約140キロ、潮の流れが速く、冬場には強風が吹き、濃い霧が発生して、夏場には多くの台風が通過する。台湾海峡は中国軍の前に立ちふさがる自然の要害である。大艦船群が整斉と行動することを阻害し、侵攻時期を春先と秋口に限定する。中国軍の海上輸送能力はどうか。

現在、中国海軍はドック型輸送艦8隻、戦車揚陸艦3隻、ヘリコプター搭載強襲揚陸艦4隻等を保有しているが、これだけでは同時輸送能力が限定される。これを補うため民間貨物船を徴用し活用するだろう。現在、中国は貨物船(1000トン以上)を5206隻、香港は1532隻保有する。軍用艦船で強襲上陸した部隊が主要港湾を確保した後に、これらの貨物船を使用し後続部隊を上陸させる。
しかしながら大規模な民間船の徴用は中国の物流システムに大きな影響を与え、国民生活に負担をかけることになる。
台湾本島への上陸にも多くの障害がある。台湾西部の海岸のうち上陸に適しているのは台北市、台南市正面と一部の台中市正面に限定される。台南正面以外は海岸からすぐに市街地が広がり、上陸部隊が展開するのに十分な地積が確保できない。内陸侵攻に移行しても、台湾を北部から南部に貫き、島を東西に分ける中央山脈の天険が最大の障害となる。この地形障害が台湾東部地区への侵攻をきわめて困難にしている。
迎え撃つ台湾軍の本島の地形を巧みに活用した陣地配備、台湾海峡の海洋障害を最大限に利用したアウトレンジからのミサイル及び各種ドローン攻撃、機雷・地雷の敷設と対機甲火力の組織化など侮ることはできない。
加えて中国は、アメリカの介入と日本の存在を考えなければならない。台湾侵攻にはかなりのハードルがあり、作戦は困難をきわめることになるが安心してはならない。ロシアのウクライナ侵攻を見ても分かるとおり、権威主義国家では指導者がいったん決心すれば、いかなる障害や犠牲があっても作戦を実行する。
その中国の内情はどうか。中央軍事委員会の張又侠副主席等が粛清された。その前段階では李尚福国防部長、何衛東中央軍事委員会副主席、林向陽東部戦区司令員など多数の将軍達が粛清されている。この粛清事案により軍の内部が混乱し、台湾の武力統一が遠のいたとの見方もある。一方、中央軍事委員会には張昇民副主席・中央規律委員会副主席と習近平の二人しかいなくなり、実質的には彼の独裁体制となった。また粛清された高官ポストに若手将軍を抜擢しているとの情報がある。抜擢された将軍達は習近平に恩義を感じ、彼の命令には無条件で従うことだろう。もはや台湾の武力統一に異議を唱える者がいなくなったのである。
『その時、日本はどうする!』
東シナ海において作戦遂行中の米海軍巡洋艦に、中国海軍フルゲート艦から対艦ミサイルが発射される事案が発生した。米政府の護衛要請により、日本政府は当該事案を存立危機事態に認定し、それまで米海軍艦艇に後方支援活動(重要影響事態による活動)を行っていた海上自衛隊に米艦防護の命令が下った。
与那国島西方海域を飛行中であった海上自衛隊の哨戒機が、中国海軍駆逐艦から発射された対空ミサイルにより撃墜された。また、同日には米艦防護任務中の護衛艦に中国海軍戦闘機から対艦ミサイルが発射されたが、これは対空ミサイルにより迎撃された。日本政府は、両攻撃を武力攻撃事態に認定し、陸海空自衛隊に防衛出動を命じた。
翌日未明から石垣島では、Jアラートがけたたましい警告音を発するとともに、中国軍の巡航ミサイルが自衛隊の防空網を突破し、空港・港湾や発電施設などに次々に着弾した。
上記は架空のシミュレーションである。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は、2026年に中国が台湾に侵攻するとのシミュレーションを実施し報告書を出している。その中で「侵攻は最初の数時間で台湾の海空軍の大半を破壊する攻撃から開始され、中国海軍は台湾を包囲し、数万の中国軍兵士が海峡を渡る。しかし開戦と同時に米軍が介入し、台湾地上軍は上陸拠点の中国軍を急襲し、日本の自衛隊の支援を受けた米海軍が中国軍の上陸船団を撃沈し、ほぼすべてのシナリオで中国軍の侵攻は失敗する」と予測している。
このシミュレーションの前提は、日本が当初から台湾海峡における米軍の作戦において重要な役割を担うことである。しかし、この結果多くの自衛隊員と航空機112~161機、艦艇26隻を失うとしている。
現在、政府は「国家安全保障戦略」など安保3文書に基づいて、防衛力の抜本的強化に取り組んでいる。人員・装備などの戦力強化とともに、その戦力の損耗を補う態勢の整備も必要である。特に人的戦力については課題がある。現在、募集環境は厳しく、部隊は慢性的な充足低下(欠員)に悩まされている。ロシア・ウクライナ戦争を見ても分かるとおり、両国は徴兵制であるが戦争の長期化に伴い兵士不足直面している。
徴兵制の無い日本において動員は非現実的であり、その損耗を補う手段は予備自衛官と緊急募集になる。有事の緊急募集の実効性は「命をかけて日本を守り抜く」との国民の決意にかかっている。
日本は犠牲をいとわずに米国とともに台湾海峡の平和と国の安全を守ることができるのか。日本人の真価が問われる時が目前に迫っている。
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