特殊作戦・・日本が行う特殊作戦とは。

ベネゼエラにおいて米軍が大統領を拘束するというの特殊作戦を行った。特殊作戦とは何か・・。日本が行う特殊作戦についてショートストーリーで説明します。
山下裕貴 2026.01.25
誰でも

 年明け早々、驚くニュースが世界中を駆け回った。それは米国がベネゼエラのマドゥーロ大統領と妻を拘束したとのニュースである。2026年1月3日午前2時(現地時間)、米軍は首都カラカスを含む多数の地点を爆撃し、ベネゼエラ軍の防空システムを無力化、攻撃開始前にはサイバー攻撃によりカラカス市内を停電させ、特殊部隊を送り込み作戦目的を達成した。

 この米国の行動の評価は分かれるところである。「独裁政権を倒し国民に自由をもたらした(副大統領のロドリゲスが暫定大統領になり統治体制に変更はないが)」、あるいは「麻薬撲滅に寄与した」などは肯定的な意見である。しかしながら客観的にみれば、力による現状変更であり、いわゆる「法の支配」を否定した行動である。

                 (陸上自衛隊公式X、特殊作戦群の演習)

                 (陸上自衛隊公式X、特殊作戦群の演習)

  日本人は敗戦後から永らく「米国は世界一の超大国として存在し、世界の警察官として法に基づき国際問題を解決する。西側の民主主義の模範として行動する」と思い込んでいた(おそらく日本国憲法の前文もこの思想から作成されたものと思料する)。この多くの日本人の考えが、今次作戦により思い込み(実際にはトランプ大統領就任から崩れていたが)であったと認識させられた。米国もロシアやイスラエルと同じく「自国の国益に基づき、自国が正義と信ずる場合には迷うことなく力を行使する」ということである。

 国家が軍事行動を行う際には、正規部隊を使用する場合(イラク戦争など)と、今回のような特殊部隊を使用する(オサマ・ビンラデンの殺害など)場合がある。特殊部隊を使用した場合には、作戦完了後に公にする場合と非公表の場合がある(非公表の作戦が多いのではないだろうか)。

 国家として、全面戦争に拡大せずに秘密裡に準備・実行する必要がある場合に特殊部隊を使用する。国益や国民の生命財産を守るためには、相手国の主権を侵害し国際法を無視する場合もある。国家としての決断が求められる作戦である。

 日本に特殊作戦を行うような状況が生起するのだろうか・・。部隊としては陸上自衛隊に特殊作戦群が編成され、日夜過酷な訓練を国内外で行っている。

 それでは日本の特殊部隊が作戦する状況をショートストーリーで説明したい

 20××年3月中旬に始まった中国軍の台湾侵作戦は、作戦開始前のサイバー攻撃、第二段階の激しいミサイル攻撃とドローンによる空爆、それに続く大規模な上陸作戦へと拡大していった。

 4月某日午後7時、台湾本島西側沿岸部及び北側では台湾軍と中国軍の激しい戦闘が続いていた。在留邦人約2万人のほとんどは侵攻開始前に帰国していたが、避難し遅れた千数百人が残留していた。その内、日本政府の窓口である日本台湾交流協会職員と日本貿易振興機構職員(JETO)、その他企業関係者40名が大型バスで台湾東側沿岸部の羅東鎮を通過し蘇澳鎮まで移動してきた。目的地は花蓮市に開設されている国連難民高等弁務官事務所の日本代表部である。花蓮市に避難してきた在留外国人はヘリコプターにより沖合に停泊中の各国船舶にピストン輸送されていた。

「小山代表(台北事務所代表)、ここまでは何とか順調ですね」とJETOの加藤がほっとした様子で話しかけた。

「国道が大混雑していたが、ここまで来ると幾分避難車両が減ったね。この付近の住民は花蓮より南に疎開するか、日本に避難したそうですよ」

「避難車両は外国人ばかりですね」

「夜間は危険なので台湾警察の護衛を受けろとの外交部の話でしたが・・警察は機能していませんね」

「それどころじゃない。ということでしょう」

 彼らの大型バスが市街地から丘陵地帯に入ったところで、道路上に検問が敷かれていた。これまで何度も通過した警察や軍の検問施設(バリケード)とは違い、切り倒した木で道路を閉塞した応急的な道路障害だった。検問員が懐中電灯を大きく回して止まれと指示した。

  乗り込んできたのは台湾の犯罪集団「太陽会」の構成員だった。彼らは日本人を人質として拉致し、近くの今は無人となった小学校に監禁した。

「角頭(親分)。日本人の中に役人がいます。大陸に売れますよ」と構成員がいった。

「そうだな。解放軍から外国人、特に大使館員などを引き渡せば賞金を出すとの連絡があったからな」と角頭がニヤリとしながらこたえた。

 早速、手下の一人がスマホを取り出し、人民解放軍北部戦線司令部(台北以北の作戦担当)の宣撫工作部に連絡を取り指示を受けた。

「角頭。解放軍の到着まで人質を拘束しておけ」との宣撫将校の命令です。

「あいつらは役人以外に関心はない。他の日本人は日本政府から身代金をいただくとしようじゃないか」

「いい考えですね。花蓮の日本代表部に連絡をつけます」

 小学校の施設は、3階建ての校舎1棟と体育館であり一周200メートルのグランドの西側に並んで設けられていた。日本人達は校舎の北側1階の教室に監禁されていた。太陽会の構成員は10人、そのうち見張り役として教室の入口に一人、グランド入口に二人が配置されている。その他の構成員は隣接の職員室に集まり、角頭を中心に車座になり酒盛りをしていた。

日本人の人質達は極度の緊張感と不安感で震えていた。

「小山さん。我々はどうなるのでしょうか」と加藤が不安そうな表情できいた。

「さっき奴らが話していたが、日本政府に身代金を要求しているらしい」

「ということは・・命はとられない。そういうことですね」

「たぶん・・。しかし交渉が上手くいくか・・」

「女性が15人います。我々で守れればいいですが・・」

 花蓮の日本政府代表部から、交流協会台北事務所代表及び日本人グループが親中ゲリラに拉致されたとの情報が官邸の在留邦人避難対策本部に入った。対策本部の要請により、統合作戦司令部は、親中ゲリラのスマホの位置情報から居場所を概定し、偵察衛星と無人機により監視態勢に入った。

花蓮沖に停泊している海自輸送艦「おおすみ」の輸送作戦司令部に対策本部長である首相から連絡が入った。

「こちら作戦部隊司令官の霧山海将補です」

「本部長の高木です。蘇澳鎮の山間部において交流協会代表以下の日本人が親中ゲリラに拉致・監禁されています。艦上に待機しているS部隊(特殊作戦群の略称)を出動させて救出してもらえますか」と高木首相が確認した。

「部隊はいつでも出動可能です。S部隊指揮官にかわります」

「S部隊指揮官の渡1尉です。現在、防衛出動命令が下令されていません。突入時に戦闘になる可能性が極めて高いと思います」

「国際法に基づいて任務を遂行して下さい。責任は私が取ります」と高木首相が危害射撃を許可した。

「了解しました」

S部隊11人は黒い戦闘服、目出し帽・防弾チョッキに拳銃・消音装置付き自動小銃、ボディカメラ・通信機など特殊装備を装着し艦上の多用途ヘリ2機に搭乗した。監禁場所の小学校まで飛行時間は約20分である。

「全員聞け。作戦は説明した通りだ。現地は親中ゲリラの巣窟であり、学校周囲にも他のゲリラ・グループが存在している。速攻でいくぞ」と渡小隊長が通信機で全員に命じた。

「おおすみ」の艦上を離陸した102飛行隊の黒い多用途ヘリ(UH―60)2機は、月明かりの無い漆黒の夜空を西に飛行していった。続いて艦上から救出した日本人の輸送用に大型輸送ヘリCH―47が離陸した。

 職員室で酒盛りしていた太陽会の角頭以下構成員達は酩酊し、いびきをかきながら眠り込んでいた。しかし、教室入口の見張りとグランド入口の見張りは、飲酒することなく厳しい目つきで自動小銃を構え警戒の任に就いている。遠く北の方角から人民解放軍の空襲と思われる激しい爆発音が聞こえていた。また沖合から花蓮方向に行交う救出用航空機の爆音も途切れることなく聞こえていた。

 陸自の多用途ヘリは小学校から300メートルほど離れた空き地にホバリングすると、隊員達をロープで降下させた。数秒間で全員が空き地に降下し暗闇の中、目標の小学校へと前進していった。

 渡小隊長はグランド入口手前50メートルの位置で部隊を停止させた。手持ちの情報端末には上空の無人機からの赤外線映像及び先行発進させた小型ドローンによる熱感知映像が映し出されていた。これによりグランドの歩哨、校舎内の人員を把握した。次に通信陸曹が手のひらの半分ほどの大きさの超小型ドローン2機を飛ばした。このドローンには小型カメラが付いており室内の状況を確認するために使用する。ドローンは校舎に到達すると、職員室と教室の換気用小窓から進入し、室内を飛行しながら細部にわたり偵察した。

「一般教室には40名ほどが床に座っています。また隣室には7名ほどがごろ寝状態です。廊下には歩哨と思われる1名が確認できます」と通信陸曹が報告した。

「全員、両肩に日章旗パッチを装着しろ」と小隊陸曹が指示した。

全員がポケットから日章旗を取り出し装着した。

「それから、我々の行動はボディカメラで官邸にリアルタイム送信されている。忘れるな」

隊員達はカメラを左手で触り、目で笑った。

「ブラボー(副小隊長以下3人・・狙撃手と救護陸曹)はグランド入口の歩哨2名を無害化した後、同位置にて援護態勢を取れ。チャーリー(小隊陸曹以下4人)は隣室の敵を無害化。アルファ(小隊長以下4人)は人質を解放する」と短く渡小隊長が命令した。

了解!と全員が右手親指を立てた。

 狙撃手が消音装置付き狙撃銃を使用してグランド入口の歩哨をすばやく斃した。小隊はグランド入口まで前進し、ブラボーを残置すると校舎まで前進した。先頭の渡小隊長は校舎入口から中に入ると、消音装置付き小銃で廊下に立ちタバコをふかしていた歩哨を斃した。アルファは教室の入り口に、チャーリーは職員室の入り口で突入態勢をとった。渡小隊長が手信号で突入を命じた。職員室に突入した4人はあっという間に角頭以下の構成員を斃した。渡小隊長以下4人が職員室に入った。

 室内にいた全員が隣室の騒音に驚き、また突然入ってきた黒ずくめの兵士達を見た。人民解放軍の兵士だと観念する者もいた。小山代表も突然の状況を把握できず、ただ混乱している。

黒い集団のリーダーらしき兵士が、一番近くにいた小山代表の前まで来ると懐中電灯で自分の右肩を照らした。そこには日章旗のパッチが付いていた。兵士は目出し帽を顎まで下げて顔が見えるようにした。

「安心して下さい。日本国自衛隊です。皆さんをお迎えに来ました」と兵士はいった。

小山代表は彼の肩に付いている日章旗を見て、また彼の言葉を聞いて、胸が熱くなり涙が溢れるのを我慢できなかった。その場にいた全員が嬉しさのあまり泣いていた。

「さあ。帰りましょう。ご家族の待つ日本へ」

グランドには輸送用ヘリが着陸し、人質全員を収容すると海上の輸送艦に向けて離陸していった。S部隊隊員達は次に到着した多用途ヘリに搭乗し同じく輸送艦へと帰投した。

以上が日本で特殊作戦を行う一例である。

 このケースの中で首相は重大な決断をおこなっている。それは武力攻撃事態の認定がない(防衛出動命令が下令されていない)状況の中で特殊部隊に出動を命じた。また他国内に当該国の同意のないまま部隊を派遣し、そして戦闘を命じ、犯罪者の危害射撃(殺人)を許可した。法の支配を原則とする日本政府がたとえ人質救出のためとはいえ、右のような決断ができるのか。

 中国が台湾を武力統一する可能性が高いとされる2027年が迫っている。「2027年、侵攻の可能性は何%あるのか」との質問をよくいただくが、可能性がある以上、国家としては安全保障上の準備を行わなければならない。現在、日本には作戦に使用できる特殊部隊があり、さきほどのケースであれば情報を収集する手段(組織・装備)もある。

国民の生命・財産を守るためには、政府として果敢な決断を行うことが必要であり、そのような指導者を国民は求めている

無料で「山下裕貴 安全保障深掘りニュースレター」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

誰でも
海洋型ドローン対有人艦隊
誰でも
総選挙、大勝。最大の懸案は中国だ!
誰でも
台湾有事、在留邦人は、住民避難は・・政府の決断
誰でも
「自衛隊は軍隊なのか」・・結論は
誰でも
台湾に侵攻した中国軍を悩ます戦場の摩擦
誰でも
職場の厳しさ・・会社・組織で役に立つ話
誰でも
12式地対艦誘導弾能力向上型の配備と反撃能力
誰でも
台湾有事、日本に行われるハイブリット戦とは