台湾に侵攻した中国軍を悩ます戦場の摩擦
新年早々、米国によるベネズエラへの特殊作戦には驚かされた。米国の作戦目的や国際社会への影響などは別の稿にまとめたい。
人民解放軍軍事パレード( 人民日報 )
「いかにすれば紛争や戦争を防止できるのか」は、世界中の人々が願うことだろう。戦争は多くの破壊をもたらし罪のない人々の命を奪う。核戦争が起これば人類に破滅的結果を与えることになる。そのため国家間では、協定や条約などで、紛争や戦争を防止するための努力が行われている。しかしながら実際にはその発生を防止できていない。
クラウゼヴィッツは『戦争論』のなかで「戦争とは、他の手段をもってする政策の継続にすぎない」と述べている。彼は戦争とは政治目的を達成するための一つの政治手段にすぎないとしたのである。戦争がなくならない根本原因がここにある。
中国の習近平総書記は、3期目に入った段階の中央委員会政治報告において、台湾の統一について「武力行使を決して放棄しない。あらゆる選択肢を持ち続ける」と宣言した。その時期について、米国政府関係者は2027年の可能性(これ以降はいつでも侵攻の可能性がある。人民解放軍が軍事的に侵攻可能な能力を完成)が高いと言っている。それは習近平が4期目をうかがう時期であり、人民解放軍の強軍化目標の達成、同じく軍創設100年の節目だからだ。その政治目的達成手段が武力行使(戦争)である。
クラウゼヴィッツは「現実の戦争では予測不可能な障害が発生し、軍隊は予定どおり行動できない」とし、戦争においては計画したことがそのまま実行に移されることはまれである。実際には無数の小さな障害が発生して、実行を妨害する。予測できない数々の障害が「摩擦」であるとしている。ウクライナに侵攻したロシア軍は、当初計画したであろう短期間での戦争を終わらせることができずに長期化させている。天候・情報・過失・偶発事件などに加えて西側諸国の予想を超える支援という大きな摩擦が発生したからである。現代の戦争では「摩擦」の範囲が拡大し、周辺国の干渉も戦争に大きく影響を及ぼしている。
中国は昨年末から大規模演習を台湾周辺で行った。台湾に侵攻するためには、上陸部隊や補給品を輸送する船団と護衛艦隊の渡海が必要になる。多くの船舶や艦船が台湾海峡で作戦するためには、同海峡の気象・海象の安定(モンスーン気候、台風、霧の発生など)が条件となり、その条件に合うのは三月中旬と九月中旬である。三月中旬となれば中国海軍の練度を12月には最大に上げる必要があり、この時期に東部戦区が大規模演習を行っている理由だと推察される。
侵攻する中国軍を待ち受ける「摩擦」は天候だけではない。台湾本島の地形とそれを最大限に活用した台湾軍の防衛組織、米国等諸外国の台湾への協力と軍の支援、国際社会の反発などである。中国指導部が台湾の武力統一には「摩擦」が多過ぎると判断すれば立ち止まるだろう。その台湾有事に日本はどのように向き合うのか。抑止力を高め「摩擦」の一つのアクターになることいが必要であろう。
来月の衆議院選挙の結果が気になるところだが。日本政府は、台湾有事を含む厳しい国際情勢に対応するために、安保関連3文書を改訂し新たな防衛態勢を構築しようとしている。ウクライナ戦争を研究している中国が、日本の防衛力強化を台湾侵攻における大きな摩擦要因として捉えれば、戦争抑止に大きく貢献するだろう。そのためには改訂される安保三文書にしたがって着実に自衛隊の防衛能力を強化しなければならない。
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