指揮官の統率とは

組織を強くし生存競争に勝てるリーダーとは・・・有事に一歩も退かず「真に戦える部隊」、これを育成し統率するには、恩威並んで使うことが基本原理。これをを知る者こそが勝利する。
山下裕貴 2026.09.09
誰でも

 1561年(永禄4年)9月10日(グレゴリオ暦、10月28日)、上杉謙信は宿敵武田信玄に、今度こそ勝利せんものと深く心に期して、武田領内に進撃し、ここに「川中島第 四次合戦」が開始された。  

米沢市上杉博物館「開館25周年記念特別展『上杉謙信と川中島合戦』」

米沢市上杉博物館「開館25周年記念特別展『上杉謙信と川中島合戦』」

 この朝、川中島一体は濃い霧に包まれ、暫くすると朝霧がゆっくりと流れ始め、両軍は霧の中で激突し乱戦となった。この最中に、謙信が手勢を率いて敵陣深く進入し、単騎で信玄の陣営を衝き、信玄に三太刀七太刀を浴びせかけ、軍扇で防ぐ信玄の肩先を切り割ったとい う逸話も残っている。  

 この壮絶な戦いに参加した両軍の兵力は、合わせて約3万2千人、その内、戦死者は実に8千人と記されている。上杉方の侵攻を防いだ武田方も信玄が傷つき、重臣達や軍師山本勘助も戦死するなど、戦死者比率の高い激戦だった。  

 この戦いを見るに、何よりも将帥の統率ということを深く考えさせられる。そもそも統率 とは「指揮官がその意志を部下に強制する」ことである。この合戦では信玄・謙信の両雄が極めて強力な統率者であったからこそ、両軍兵士は指揮官がその戦いに見切りをつけるまで、一歩も退かずに戦ったのである。

 強力な統率が成立する要件の一つとして、強い権威というものがある。古兵書「孫子」には武将の備えるべき資質として、智・信・仁・勇・厳などを挙げているが、その内の厳にあたるものであるし、恩威併行でいえば威にあたり、集団の厳しい空気を保つ力となるものである。ただし、強制だけでは部下将兵の心は離反するだけであり、併せて恩も必要なのである。

 別の兵書「尉繚子」では「民を率いるには、必ず礼信を先にし、爵禄(爵位と俸禄)を後にする。統治は民に物質的利益を与えることよりも、礼節すなわち精神的利益の方を第一にすべきである。統率は『利益と恐怖と感情の刺激』の三条件からなるといわれるが、その中で感情を刺激し、人生意気に感じさせることを第一にすべきである」と記されている 。  

 有事に一歩も退かず「真に戦える部隊」、これを育成し統率するには、恩威並んで使うことが基本原理なのである。

 ウクライナ戦争及びイラン攻撃は、指揮官として統率を如何になすべきかを考える教訓の宝庫である。

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