「自衛隊は軍隊なのか」・・結論は

 自衛隊は国際的には「軍隊」である。戦後の歩みの中で実力組織として軍隊とは違う、1佐・1尉、普通科・特科など用語も変えられ軍隊とは違うと説明されてきた。名称などはすぐに変えられるしかし、本質的な部分を変更しなければ「軍隊」にはならない。それは何か・・・
山下裕貴 2026.01.23
誰でも

 衆議院が解散し、各政党は実質的に選挙戦に突入した。高市首相は解散に関する記者会見において「高市早苗に国家運営を託していただけるか。そうでなければ、野田総理か斎藤総理か、別の方か」と政権選択を国民に迫った。2027年(台湾有事の可能性があるといわれている)が目前であり、安定した政権基盤と国民の信を受け国家運営を行う・・危機に際して国民の生命・財産を守らなければならない。緊急事態にスピード感を持って対処しなければならない・・安全保障上の危機感の表れでもある。

        日米指揮所演習(YS69)、指揮官懇談で方面総監部に来監した第1軍団司令官の儀仗

        日米指揮所演習(YS69)、指揮官懇談で方面総監部に来監した第1軍団司令官の儀仗

 その安全保障の要は自衛隊である。「自衛隊は軍隊ですか」、よく聞かれる質問である。憲法解釈を別にして、自衛隊の編成装備や運用を見れば紛れもなく軍事組織といえる。国際貢献や海外での訓練などの場面では、国際的にも軍隊として認知されている。しかし実際には自衛隊は行政機関であり、武装公務員の集合体である。

 旧陸軍では「国軍の建設、維持、管理、運用等に関する諸制度を軍制とし、一国の軍備は軍制を具体化したものである」と規定し、軍隊は軍制が基本であるとしていた。軍制は次の本質に大別される。一、軍政事項(国軍の建設、維持、管理に関する事項)。二、軍令事項(国軍の編成、指揮運用に関する事項)。三、混成事項(軍政及び軍令両者の区分不明瞭な事項)。四、軍事裁判事項(軍関係犯罪の処理に関する事項)。

 諸外国軍隊にあって自衛隊にないものが、軍法(軍刑法)及び軍法会議(裁判所)である。それは、日本国憲法において特別裁判所が禁じられているからである。このため自衛隊員の犯罪は自衛隊法に規定されていても一般の裁判所で裁かれる。戦場という特殊な環境で発生する事案は、平時の法律では裁定できない。そのために軍隊には、軍法があり軍法会議が置かれている。その目的は規律(軍律)の維持であるが、軍人の権利の擁護もある。戦闘中に指揮官の命令で発生した誤射事件の場合、一般刑法では状況によって発射した隊員が重罪となる可能性がある。軍法では、誤射の責任はあくまで指揮官にあるとされ指揮官が重罪となる。有事に指揮官の命令に従わせるためには、一切の責任を指揮官が負わなければならない。部下が責任を追及される事態となれば、誰も命令に服さなくなる。また利敵行為など有事の法規定の見直しも必要である。こうした点を見ても分かるように、軍法及び軍事裁判事項の欠落した組織である自衛隊は軍隊ではない。

 戦後78年間、幸いにも日本は戦争に巻き込まれることなく平和を享受してきた。自衛隊も防衛任務に従事することなく、「軍法及び軍法会議」という制度がない問題点が顕在化することはなかった。

 台湾有事が日本に波及し、自衛隊が防衛出動を行うときに、自衛隊という武力組織の団結・規律・士気を維持できるのか。憲法改正を含み、早急に検討しなければならない法的課題である。

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